公費による抜本的賃金改善を!介護保険改悪は中止せよ!現場の声を突き付ける

NOVEMBER 2022ケアワーカーズユニオン

11/25/2022

11・22厚生労働省・財務省交渉

介護・福祉総がかり行動は、東京、福島県などの介護労働者などとともに「介護現場を守ろう!対政府交渉」を11月22日行いました。

厚労省・財務省と4時間以上に及ぶ交渉で、介護現場の声を突き付ける

<厚生労働省への主な要求項目>

  1. 介護労働者の抜本的な処遇改善を求める要求

  2. ホームヘルパーの処遇を抜本的に改善するための要求

  3. 負担増・サービス削減の介護保険制度見直しの中止を求める要求

  4. コロナ危機下での介護現場の困難を軽減するための要求

  5. 障害福祉サービスからの高齢者排除を改めさせ、同サービスの改善を求める要求


■まったく不十分「9000円賃上げ」。公費で抜本的改善を!        
      厚生労働省-「処遇改善は必要」

交渉団は、深刻な人手不足に陥っている介護現場の実態を示しながら、全ての介護労働者に全産業平均以上の賃金を全額国庫負担で行うよう求めました。
厚生労働省は、「まずは、今般の処遇改善措置がどのように給与に反映されているか検証したい」と回答。
交渉団は、独自に行った「9000円賃上げ実態調査アンケート」結果を示し、①「賃上げがあった」と回答した介護労働者は半分以下の47%にとどまっていること、②賃上げ額も6000円に満たない回答が半数以上を閉め、③基本給改善は10%しかなく諸手当が7割以上であることなどを示し、「まったく不十分、さらなる賃金改善をすべき」と主張しました。さらに、厚生労働省の審議会の検討資料から「処遇改善」の項目が消え、「生産性向上の推進」が前面に出ていることについても「もう処遇改善は必要がないと考えているのか」追及しました。
厚生労働省は、「介護職員の賃金が適正な水準まで引き上がる処遇改善は必要」と答えるにとどまりました。

■ICT・ロボットを人員基準切り下げに使うな!        
      厚生労働省-「人減らしは目的としない」

ロボット・ICT活用等を口実とした「人員配置基準緩和」について、厚生労働省は、「人員基準について、緩和するかどうかも含め、具体的な内容を決定した事実はない。エビデンスの収集・蓄積をしっかりやって検討していく」とあいまいな回答をしました。また、グループホームでは、「利用者3:介護職員1」の基準に対し、全国平均で「利用者1.4人:介護職員1人」の配置となっていることも示しました。  
交渉団は、「現在の人員配置基準が低すぎる。これを介護報酬を引き上げ実態に合わせた配置基準に改善することが先決。基準引き下げなど論外だ」と指摘しました。  
厚生労働省は、「生産性向上=人減らしではない。サービスの質の向上が目的で、業務改善によってできた時間を利用者サービス向上に活用できる。人を減らせばいいとは思っていない」と返答しました。  
交渉団からは、「介護現場で『業務効率化』と称して利用者の個別性を無視して管理するようなことが横行すれば、心ある介護職員は辞めていく。介護でなく監視・管理の施設に変質する。このような実証や検討はやめるべき」と強く求めました。

■ホームヘルパーの移動・待機時間の賃金未払い解決せよ!          
      厚生労働省-「調査の必要性」を認める

厚生労働省は登録制ヘルパーの移動時間・待機時間の賃金未払い問題について、「移動時間・待機時間も賃金を支払うよう通知している。介護報酬には、その分も勘案して包括して単位設定されている」と回答しました。
交渉団は、ホームヘルパー(訪問介護)の介護報酬は、厚労省が初めて移動・待機時間に賃金を支払うよう通知した2004年8月以降の報酬改定でもまったく上がっていない事実を示し介護報酬に含まれているというのは根拠がないことを指摘しました。
さらに、福島県のヘルパーからは「片道60キロメートルもの距離を移動して利用者に訪問している。ヘルパーは待機時間にも利用者の情報を電話で伝えたり仕事している。移動時間に走りながら食事している」と事例を紹介しました。
交渉団は、「移動時間を勘案して介護報酬を決めているというならどのような調査をしているのか」と質しましたが、厚生労働省は「経営実態調査のデータなど」と返答し、移動時間調査をしていないことを認めました。
きちんと移動・待機時間の実態を調査すべきとの指摘に対し、厚生労働省の担当者は「調査の必要性は感じました」と返答しました。

■2024年度制度改定 負担増・サービス切捨てするな!

2024年度制度改定に向けて厚生労働省の審議会で12月の「意見」とりまとめに向けて検討している2024年度見直しの内容について交渉しました。

① 利用者負担 2割・3割の対象拡大するな!
      厚生労働省―データのおかしさは認める

介護サービス利用者負担は、2割負担・3割負担の対象を拡大することが狙われています。
交渉団は、厚生労働省が審議会に出した資料で2018年の2割負担導入時にサービスを減らした理由で一番多いのが「介護に係る支出が重い」(35%)であるにも関わらず「利用者全体の1.3%」と母集団をすり替え意図的に影響を小さく見せようとしていること、夫婦高齢者無職世帯の家計収支が月1.8万円赤字であることを示した「総務省家計調査報告(2021年)」を示さず、稼働所得や預貯金額のデータを示し、2割負担でも支払い可能であるかのように見せるなどのデータの意図的な利用について指摘しました。厚生労働省担当者は一部「おかしい」ことを認める発言を行いましたが、「様々なご意見をしっかりと聴き生活の影響へも考慮して検討をすすめる」と答えるにとどまりました。

② 要介護1,2の通所介護・訪問介護の総合事業移行やめよ!     
      厚生労働省-「現実的には令和6年度には間に合わない」

要支援1,2のように要介護1,2の人のホームヘルパー(訪問介護)、通所介護(デイサービス)を保険給付から外し総合事業に移行することが狙われています。  
これについて厚生労働省は、「様々な観点からのご意見を踏まえ丁寧に検討をすすめたい」と回答しました。交渉団の追及に対し、厚生労働省は「要介護1,2が ひとくくりに総合事業に行けるという話ではない」と発言しました。  
さらに、移行には「法改正が必要」であるとしたため、「今から2024年度に間に合うのか」と問うと「令和6年度実施は現実的には間に合わない」と返答しました。

③ケアマネジメント利用者負担導入するな!   
      厚生労働省-利用者負担の悪影響は認めるが

               「利用者負担導入しない選択肢はないとは言えない」

現在利用者負担なしのケアマネジャーにまで利用者負担の導入が狙われています。厚生労働省は「様々なご意見をいただいており、丁寧に検討をすすめる」と回答しました。  
交渉団の「ケアマネジメントが有料化されればどのような影響あるのか」との質問に厚生労働省は「有料になることでサービス利用控えになる。低所得で負担できない方をどうするのかという意見もある」と返答しました。また、「ケアマネジャーが無料だからつながることができているという事例もある」と認めました。
交渉団は「そのような悪影響があるなら、利用者負担導入の選択肢はないのでないか」と追及すると、厚生労働省の担当者は「『選択肢がない』とまでは私の口からは言えない」と答えました。

■コロナ対策  
交渉では、コロナ対策をめぐりやりとりの中で、施設内療養者には補助はあるものの在宅療養者には何の補助もないにも関わらず、入院できないコロナ感染者を介護従事者がケアしている実態の改善を求めました。

■障害福祉サービス改善も交渉
障害福祉サービスでは、「障害者総合支援法等5法案束ね改正案の問題点と障害者データベース整備の「地域間格差」把握や「ニーズ把握」の目的についても問題点を指摘しました。 また、重度訪問介護の対象に就労・就学が入っていないことについて、障害当事者の方から「障害者の人間としての生活を制限するような制約は撤廃して欲しい」との訴えがあり、障害者のニーズに総合的に応えた施策の求めました。

<財務省への主な要求項目>

  • 社会保障の改善・充実に必要な財政支出を行い、防衛費(軍事費)拡大を止めること

  • 国の責任で介護現場の深刻な人手不足を解消し、介護労働者の抜本的な処遇改善を実施すること

  • 介護保険見直しに向けた財務省の改悪提言(財政制度等審議会建議)を撤回すること


■介護労働者への賃上げへ財政支出を!
      財務省ー「社会保障費は高齢化による増加分のみに押さえる」

財務省は、介護労働者の大幅な賃金引き上げなど社会保障への財政支出要求に対して「社会保障の重要性を認識しつつも、財政の健全化も重要であり、高齢化による増加分に押さえていく方針で予算編成する」と答えました。

■軍事費増(防衛力の抜本的充実)で社会保障はどうなる  
      財務省ー「防衛費の他の経費への影響については言えない」

政府が「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」(骨太の方針2022)としていることから、軍事費拡大が社会保障費削減に結びつく危険性が懸念されています。  交渉団は「防衛費の増大が社会保障費にどう影響するのか」と問いましたが、財務省は「どう影響するかは令和5年度予算編成中なので申し上げられない」「防衛費の他の経費への影響は私の一存では言えない」と、空前の軍拡が社会保障費を圧迫する危険性は否定できませんでした。

■なぜ、公費による賃上げができないのか?          
      財務省ー「財源の確保が必要」  

岸田政権が「ケア従事者の収入増へ公的価格抜本的見直し」と言いながら介護職員の処遇改善支援補助金は9月で廃止し、10月からは介護報酬の加算化(ベースアップ等支援加算)したことについて、交渉団は「介護現場では利用者負担増の説明に窮している」ことを訴え、公費による賃上げを迫りました。  
財務省は「財源の確保が必要」と否定的な答弁に終始しました。昨年12月の大臣折衝で報酬加算分(210億円)の財源確保のために「社会保障充実分見直し」をするとしており、「どこを削るのか」と質問しても「予算編成過程で検討する」としか答えませんでした。

■「生産性」という言葉自体が介護現場には不適切。改めよ!
      財務省―「1人でより多くの介護サービスが提供できるのが生産性向上」  

財務省は、「介護人材不足には、1人の方が提供できるサービス量を増やす生産性向上も必要」と述べました。交渉参加者からは、介護に「効率性追求」を優先させれば介護労働者は労働強化とストレスで不適切介護や虐待が起こりかねない、と現場の実態を上げて指摘しました。また、障害当事者からは「『生産性向上』というが、人の暮らしを度外視して障害者の生活を縛る『収容施設』のようなものになってしまう。『生産性』ということばを改めるべき」という指摘もありました。

■介護保険改悪の強要やめよ!   
      財務省-「厚生労働省と議論していく」  

介護保険見直しについては、財務省担当者は「厚生労働省と議論していく」と回答しましたが、交渉団は、財務省が審議会に「利用者負担2割・3割負担の対象拡大」、「ケアマネジメントへの利用者負担導入」、「要介護1,2の訪問介護・通所介護介護の総合事業移行」をけしかける内容の資料を出していることを示し、そのような改悪強要をやめるよう強く求めました。

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